VPSとレンタルサーバーの違い
サーバー初心者でも使いやすいレンタルサーバーと、中級者以上向けのVPS。両者の違いは何か、機能の違いや使い方の違いをまとめました。
公開日: 2023.3.1
VPSと共有レンタルサーバーについてのおさらい
VPSとは
VPS(Virtual Private Server)は、仮想的なプライベートサーバーを利用するホスティングサービスです。VPSは、複数のユーザーが同じサーバーを使用することができますが、それぞれのユーザーは他のユーザーから隔離された独自の仮想環境を利用することができます。
共有レンタルサーバーとは
共有ホスティングは、1つのサーバー上に複数のウェブサイトをホストするホスティングサービスです。共有ホスティングでは、複数のユーザーが同じサーバーを共有し、そのリソースを共有します。このため、共有ホスティングは、VPSに比べて、安価で手軽に利用できるため、個人的なウェブサイトや、中小企業に適しています。
VPSと共有ホスティングの違い
VPS | 共有レンタルサーバー | |
---|---|---|
リソース割当て | 専用のリソースを割り当て | 共有のリソースを使用(一部占有タイプもあり) |
ルートアクセス | あり | なし |
セキュリティ | 高い | 低い |
カスタマイズ性 | 高い | 低い |
コスト | 高め | 安め |
トラフィック | 大容量可 | 制限あり |
運用管理 | 自己責任で行う必要がある | プロバイダが運用管理を行う |
リソース割当て
VPSと共有レンタルサーバーの最も大きな違いの1つは、リソース割り当ての方法です。
VPSは仮想化技術を使用して、物理サーバーを複数の仮想サーバーに分割します。各VPSは、専用のリソース(CPU、RAM、ストレージなど)を割り当てられ、他のVPSの影響を受けることはありません。つまり、他のユーザーのアクセス状況に左右されることなく、安定したパフォーマンスを発揮することができます。
一方、共有レンタルサーバーは、複数のユーザーが同じリソースを共有します。もちろん、レンタルサーバーでもメモリやCPUの割り当てはバックグランドである程度されていますが、VPSと比較するとかなり少ない数値となります。また、同じ物理サーバーに多数のユーザーが存在するため、他のユーザーのアクセス状況によってパフォーマンスが変化します。他のユーザーがサーバーに負荷をかけている場合、自分のサイトのパフォーマンスに影響が出る可能性があります。
この辺りは、最近は共有レンタルサーバーでもリソースをうまく分散したりキャッシュさせたりする機能が搭載されていることが多いですが、それでも仮想的に占有出来るVPSと比較したらレンタルサーバーはリソースが少ないと言えます。
また、最近ではConoHa Wingのようにリソースを占有出来るタイプのレンタルサーバーも登場しています。
ルートアクセス
VPSと共有レンタルサーバーの違いの中でも、もう一つの大きな違いはルートアクセスです。ルートアクセスとは、サーバーに管理者権限でアクセス出来るかどうかと言うことです。
VPSは、仮想的に分割された独立したサーバーであるため、ルートアクセスを持つことができます。ルートアクセス権限を持つことで、ユーザーは自由にサーバーをカスタマイズし、インストールしたいアプリケーションやプログラムを自由に使用することができます。つまり、VPSを使用するユーザーは、完全に自由にサーバーをカスタマイズ、管理することができます。
一方、共有レンタルサーバーは、レンタルサーバーを提供する企業によって管理されているため、ユーザーは自由にアプリケーションをインストールすることができないことがほとんどです。ただし、逆の意味で言えば「管理しなくても良い」と言うメリットでもあります。
セキュリティー
セキュリティ面では、VPSと共有レンタルサーバーでは機能の違いというよりかは「考え方」が違います。
VPSは、ルートアクセス権限を持つことができるため、セキュリティーに対する柔軟性が高く、高度なセキュリティー対策が可能です。例えば、サーバーにファイアウォールを設定したり、ネットワーク側でアクセス制限をしたりと、不正アクセスや攻撃からの保護を行うための多数の機能があります。ただし、これは「自分でセキュリティを高めることが出来る」という意味で、VPSがデフォルトでセキュリティが高いという意味ではありません。
一方、共有レンタルサーバーは、「セキュリティ管理をするのはプロバイダー側」という観点で運用されています。どれくらいセキュリティを高められるかはプロバイダー次第というわけです。共有レンタルサーバーはセキュリティを重要視しているので比較的高いセキュリティ設定をしていますが、柔軟なセキュリティ設定は出来ません。
また、共有レンタルサーバーは他のユーザーと同じサーバーを使用するため、他のユーザーがウイルスやマルウェアに感染したプログラムを実行していると、同じサーバーに収容される自分にも攻撃や不正アクセスなどのリスクが高くなります。
サイトの速度
一般的に「VPS=速い」「共有レンタルサーバー=遅い」と言われますが、これは正しくはありません。VPSでも設定次第でサーバーは遅くなることがありますし、共有レンタルサーバーでも、ConoHa Wingのようにリソースを占有出来るタイプの共有レンタルサーバーであれば、VPSよりも速い場合もあります。
仕組み的には、他のユーザーとリソースを共有しないVPSの方が基本的にはサイト速度は速くなります。ただし、これはどんなプログラムを動作させているか、適切なキャッシュの割り当てをしているかなどにも依存します。特に、MySQLやPHPなどメモリをたくさん食うプログラムを動かす場合は、標準設定のままだと、最初はVPSの方が速くてもメモリ不足でスタックしてしまうということもあります。
一方で、共有レンタルサーバーは、他のユーザーとリソースを共有しているためユーザーが使えるサーバーリソースは少ないですが、プロバイダーがサーバー自体を最適化しているため、「(同等プランの)VPSほど速くもないが遅くもない」というのが実情でしょう。10年ほど前と比較すると共有レンタルサーバーも処理能力では良くなっているため、無知識の素人がVPSで運用するよりも、共有レンタルサーバーを使った方が速いということもあります。
カスタマイズ性
VPSを選ぶユーザーの多くは、カスタマイズ性の低さから共有レンタルサーバーを避けるでしょう。それくらいVPSと共有レンタルサーバーではカスタマイズ性が違います。
VPSではユーザーは基本的に自由にカスタマイズすることができます。後述のスケーラビリティにも関係がありますが、サービスによってはCPUやメモリ、ストレージの容量までカスタマイズが可能です。つまり、VPSであればユーザーは、「自分のニーズに合った、カスタマイズされたサーバーを運用出来る」ということです。
共有レンタルサーバーは、「与えられた環境でプログラムを動かす」というサービスですので、VPSのような自由度はありません。アプリケーションのインストールだけでなく、PHPなどのプログラム言語の設定パラメーターにまで制限がかかるため、アプリケーションによっては全く動かないということもあり、しかもそれをカスタマイズで解決することも出来ません。
スケーラビリティー
VPSと共有レンタルサーバーは、スケーラビリティーについても違いがあります。
かつてはどちらも「一度契約したらプランのアップグレードが出来ない」というのが当たり前でしたが、VPSでは速い段階からプランのアップグレード、ダウングレードが可能になりました。最近では、共有レンタルサーバーでもプランのアップグレード・ダウングレードに対応するようになっています。
ただし、仮想化されたサーバーであるVPSはより自由にリソースを追加することができます。例えば、Webサイトが急速に成長している場合、CPU、メモリ、ストレージなどリソースを迅速に追加することができます。サービスによっては「CPUだけ、メモリだけ」追加することも可能です。また、VPSは、複数のサーバーをクラスター化して、スケーラビリティーを向上させることもできます。
一方、共有レンタルサーバーには、スケーラビリティーに関してはVPSには敵いません。最近の共有レンタルサーバーでは、プランのアップグレード・ダウングレードに対応したり、「時間単位でアップグレード出来る」というサービスもありますが、クラスタまで組めるVPSと比較したら選択肢は限定的です。
ただし、一般的なWebサイトやブログ程度であれば、共有レンタルサーバーのスケーラビリティでも十分な場合もあります。
コスト
一般的には、自由度が高いVPSの方がコストは高くなり、サーバーを多くのユーザーで共有するレンタルサーバーの方がコストは安くなります。
しかし、コスト面で比較すると、かつては月額1,000円以上が当たり前のVPSと、月額100円でもレンタルできる共有レンタルサーバーという大きな差がありましたが、最近では300円未満でレンタル出来るVPSや、VPSよりも割高なリソース占有レンタルサーバーも登場しているため、一概に「どちらがコスパ良い」とは言えない状況になってきています。
利用条件によっては「高いレンタルサーバーを借りるくらいならVPSを借りた方が良い」ということもありますし、「しっかり運用できないくらいなら共有レンタルサーバーの方がコスパは良い」というケースもあるため、自分の利用状況によって最適な方を選ぶというのが最近のトレンドです。
VPSと共有ホスティング、どちらを選ぶべきか?
良い意味で「より選択が難しくなった」VPSと共有ホスティング
ここまで解説してきた通り、VPSと共有ホスティングには大きな違いがありますが、利用者目線で言うと、共有レンタルサーバーが性能面でVPSに近づいてきたため、良い意味では「選択肢が広がった」と言えますし、悪い意味では「選ぶのが難しくなった」というのが現状です。
どちらが良いかがわからない場合は、基本的には共有レンタルサーバーから始めてみるというのは今も昔も同じですが、「結局VPSの方がよかった」となることも多いため、まずは料金プランだけでも比較するようにしましょう。